企画営業担当
の
高田さん
(
25歳
)
企画営業部部長
の
青木部長
(
40歳
)

「社員は家族」という言葉は美しいですが、組織が成長し、市場競争が激化する中で、著しい業績不振や改善意欲のない社員を抱え続けることは、経営上の大きなリスクとなります。
真面目に働く他の社員のモチベーション低下、組織全体の生産性の停滞。
経営者として「仏の顔」を使い続けることが、逆に組織を腐らせる原因になることもあります。しかし、いざ「退職」の二文字が頭をよぎると、法的リスクやトラブルへの懸念がブレーキをかけます。
今回は、ある商社(企画営業部)で起きた事例をもとに、会社として取るべき最終手段を正当化し、組織を守り抜くための**「プロセスの記録」**の重要性についてご紹介します。
【事例】「なぜ彼だけ許されるのか」現場に広がる不公平感
商社D社の企画営業部での出来事です。
若手社員の高田さん(仮名・25歳)は、数四半期にわたり営業目標が未達の状態が続いていました。
数字が出ないこと自体も問題ですが、より深刻だったのはその姿勢です。改善計画の提出は遅れ、日々の業務報告も滞りがち。
「まだ若いから」と様子を見ていましたが、必死で数字を追っている周囲の社員からは、「なぜ彼だけ許されるのか」「真面目にやるのが馬鹿らしい」という不満の声が漏れ始めていました。
青木部長(40歳)は危機感を抱きました。このままでは、悪貨が良貨を駆逐してしまう。
「できない事実」だけでなく「指導した事実」を刻む
青木部長が徹底したのは、単に「ダメだ」と烙印を押すことではなく、「クラウド型リスク管理ツール(MONTAI)」へ指導のプロセスを詳細に記録することでした。
「XX月XX日 第3四半期目標未達を確認。改善計画書の提出を指示」
「XX月XX日 計画書提出遅延(3日)。再度催促し、具体的な作成支援を実施」
高田さんの「不履行の事実」とセットで、必ず**「会社側がどうサポートし、指導したか」**を記録に残しました。これは、「会社は手を尽くした」という証拠を蓄積する作業でもありました。
「会社としてやるべきことはやった」その確信が決断を支える
残念ながら、度重なる面談と支援にもかかわらず、高田さんの行動に改善は見られませんでした。
青木部長はその経過も、日付とともに淡々と記録し続けました。
「改善の機会を与えたが、変化が見られなかった」
MONTAIに蓄積されたこの一連のログを確認した田村常務(55歳)は、最終的な判断を下しました。
「これ以上、雇用を維持することは、他の社員に対する背信行為になる」
会社は「解雇」ではなく、合意による「退職」を求める方針を固めました。
通常であれば揉める可能性のある場面ですが、手元には反論の余地がないほど積み上げられた「指導と未改善の記録」がありました。
記録は「冷徹な刃」ではなく、組織を守る「盾」になる
最終面談の場で、会社側は記録を一つひとつ提示しながら、現状の認識と会社の判断を伝えました。
高田さん自身も、自身の行動と会社の支援の履歴を客観的に突きつけられ、事実を受け入れざるを得ませんでした。結果、円満に合意退職の手続きが進められました。
感情的な対立も、法的な紛争もなく、問題を解決できたのは「記録」があったからです。
まとめ:健全な新陳代謝のために
「辞めさせるための記録」ではありません。
万が一、改善が見られなかった時に、会社と真面目な社員を守るための備えです。
本人の不履行の事実を記録する
会社が行った指導・支援のプロセスを記録する
この両輪が揃って初めて、記録は会社としての正当性を担保し、健全な組織風土を守り抜くための最も堅実な**「礎(いしずえ)」**となります。
今回のD社の事例は、毅然とした記録こそが、経営者の苦渋の決断を正解に変える力を持つことを教えてくれています。
労務トラブル事例


