デザイナー
の
渡辺さん
(
32歳
)
デザイン部長
の
田中さん
(
42歳
)

責任感が強く、弱音を吐かない社員ほど、静かに心を病んでいくことがあります。
「最近、様子がおかしいな」
経営者や上司がそう気づいた時には、すでに限界を超えているケースも少なくありません。
メンタルヘルス対応は、一歩間違えれば「安全配慮義務違反」を問われる法的リスクがあるだけでなく、大切な社員の人生を左右する極めてデリケートな問題です。
今回は、あるWeb制作会社(デザイン部)で起きた事例をもとに、苦しむ社員を適切に支援し、会社としての責任を全うするための**「見守りの記録」**についてご紹介します。
【事例】「あの優秀な彼がなぜ…」突然のパフォーマンス低下
Web制作会社J社のデザイン部での出来事です。
デザイナーの渡辺さん(仮名)は、これまで納期を一度も破ったことがない優秀な社員でした。
しかしここ数ヶ月、遅刻や信じられないようなケアレスミスが目立ち始めました。会議中も心ここにあらずといった様子。
部長が心配して声をかけても、返ってくるのは「すみません、大丈夫です」という言葉だけ。
「そっとしておいてほしいのか、助けを求めているのか…」
無理に問い詰めればパワハラになりかねないし、かといってこのまま放置すれば、彼のキャリアも会社の業務も破綻してしまう。部長は対応に苦慮していました。
「診断」しようとせず、「変化」を事実として残す
部長が徹底したのは、「うつ病ではないか?」といった素人の診断や推測を絶対に記録しないことでした。
代わりに、「クラウド型リスク管理ツール(MONTAI)」へ客観的な行動の変化(事実)だけを記録し続けました。
「XX月XX日 納期を1日失念(入社以来初)」
「XX月XX日 今週3回目の遅刻(連絡なし、理由不明確)」
「元気がない」という主観ではなく、「以前と比べて具体的にどう行動が変わったか」という事実を積み上げる。
これにより、感情的な心配ではなく、産業医などの専門家につなぐための「客観的な判断材料」が整いました。
「配慮した事実」が、会社と社員双方を守る
記録に基づき産業医と連携した結果、渡辺さんは一時的な休職に入ることになりました。
そして、さらに重要な局面は「復職後」にありました。会社は医師の意見書に基づき、時短勤務や業務調整といった配慮を実施しました。
部長は、**「会社がどのような配慮を行い、本人がどう業務を遂行したか」**も継続的にMONTAIへ記録しました。
「XX月XX日 復職プログラムに基づき、16時退社を指示し履行確認」
「XX月XX日 本人より業務負荷について相談あり、B案件を別担当へ変更」
この記録は、会社が漫然と働かせていたのではなく、本人に寄り添い、法律上の「安全配慮義務」を誠実に履行していたことの何よりの証明となります。
まとめ:記録は「監視」ではなく「見守り」のために
半年後、計画的なサポートを経て、渡辺さんは本来のパフォーマンスを取り戻しました。
この一件は、他の社員たちにも「この会社は、いざという時に社員を見捨てず守ってくれる」という深い安心感を与えました。
病名の推測ではなく、行動の変化を事実として記録する
支援や配慮のプロセスも詳細に記録する
これらを徹底することは、管理や監視ではありません。困難な状況にある社員に寄り添う「温かい眼差し」であり、同時に会社を守るための最も堅実な**「礎(いしずえ)」**となります。
今回のJ社の事例は、記録こそが救いの手となることを教えてくれています。
労務トラブル事例


