若手エンジニア
の
山田さん
(
28歳
)
チームリーダー
の
田中さん
(
35歳
)

従業員数が数名から数十名、そして100名、300名と増えていく過程で、多くの経営者が直面するのが「現場が見えなくなる」という課題です。
特に、現場を支えるエース社員の突然の離脱は、中小企業にとって経営リスクそのものと言えます。
今回は、あるIT企業(従業員50名)で実際に起きた「若手エースの無断欠勤」事例をもとに、組織の危機を回避し、むしろ信頼関係を深めるきっかけとなった**「事実の記録」**の重要性についてご紹介します。
【事例】月曜の朝、信頼していた若手エンジニアが姿を消した
ITサービス業を営むA社(従業員50名)での出来事です。
開発部のエースとして期待されていた若手エンジニアの山田さん(仮名・28歳)が、ある月曜日の朝、連絡もなく会社に現れませんでした。
300名以下の中小企業において、一人のエース社員が抜ける穴は非常に大きなものです。
「事故か? 事件か? それとも…」
直属のチームリーダーである田中さん(35歳)の脳裏には、最悪の事態もよぎりました。
初期対応の成否を分けた「リアルタイムな記録」
通常であれば、電話をかけ続けたり、慌てて周囲に聞き回ったりして情報が錯綜しがちな場面です。しかし、田中リーダーが最初に行ったのは、「クラウド型リスク管理ツール(MONTAI)」への記録でした。
「9:00 出社せず」
「9:10 本人携帯へ架電、応答なし」
「9:15 メール送信、返信なし」
田中リーダーは、推測や感情を交えず、「起きた事実」だけを時系列で記録しました。これが、後の迅速な解決への第一歩となります。
「点」の情報が「線」になり、経営判断を加速させる
同日午後、ご家族との連絡がつき、山田さんが自宅にいることが判明しました。原因は、プロジェクトでのミスを報告できないプレッシャーによるメンタル不調でした。
この事実も即座にツールへ追記されました。
外出先からこの記録を確認した佐藤社長(50歳)は、現場からの断片的な報告を待つことなく、リアルタイムで事態の深刻さを把握しました。
「これは単なるサボりではない。ケアが必要な緊急事態だ」
社長は即座に介入を決断。
中小企業ならではの「トップの機動力」と、ツールによる「情報の透明化」が噛み合った瞬間でした。
感情論になりがちな面談を「事実ベース」に変える
翌日、出社した山田さんとの面談が行われました。
無断欠勤という事実に対し、上司としては「社会人としてどうなんだ」「迷惑をかけるな」と感情的に叱責したくなる場面かもしれません。
しかし、佐藤社長と田中リーダーの手元には、時系列で整理された「記録」がありました。
社長は記録を示しながら、静かに語りかけました。
「君がミスで悩んでいたこと、そして我々が連絡が取れず心配して動いたこと。これらはすべて事実だ」
そして続けました。
「ミスは誰にでもある。一番の問題は、それを隠して連絡を絶ったことだ」
「人格」を責めるのではなく、「行動(連絡不備)」という「事実」に対して指導を行う。
この客観的なアプローチが、頑なになっていた山田さんの心を開きました。彼は素直に謝罪し、再起を誓ったのです。
「言った言わない」を防ぎ、組織の文化を変える
この一件は、単なるトラブル解決で終わりませんでした。
指導内容や本人の反省、その後の経過もすべて記録に残されたことで、「言った言わない」のトラブルリスクは消滅。さらに、この記録は「会社は社員を見捨てない」「ミスそのものより、隠蔽を問題視する」という明確なメッセージとなり、社内への**「報告・相談(ホウレンソウ)文化」の定着**につながりました。
まとめ:300名以下の企業こそ「記録」を武器に
従業員が増え、社長の目が全員に行き届かなくなる300名以下の組織規模では、現場の情報がブラックボックス化しがちです。
いつ、誰が、何をしたか(事実)
それに対して会社はどう対応したか(経緯)
これらを属人化させず、組織の資産として「記録」に残すこと。
今回のA社の事例は、「客観的な記録」こそが、社員を守り、経営リスクから組織を守るための最も堅実な「礎(いしずえ)」となることを教えてくれています。
労務トラブル事例


