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人的リスク管理・労務対応に関する実務の考え方を、現場で使える視点とともに解説

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問題社員とは|定義・4つの類型と「問題社員」と呼ぶ前に確認すべきこと

更新日

問題社員とは|定義・4つの類型と「問題社員」と呼ぶ前に確認すべきこと

問題社員とは|定義・4つの類型と「問題社員」と呼ぶ前に確認すべきこと

問題社員とは|定義・4つの類型と「問題社員」と呼ぶ前に確認すべきこと

  1. 「問題社員」に法律上の定義はない

    「問題社員」は人の属性ではなく、「行動水準からの逸脱が記録できる形で繰り返され、組織がそれに適切に対応できていない状態」として定義します。問題は人ではなく、行動と対応の不備にあります。

  2. 行動は4つの類型に分かれ、類型ごとに向かう先が違う

    勤怠・能力・協調性・非違行為の4類型で行動を分解すると、是正・配置転換・退出のどこに向かうかが見えてきます。その出口を決めるのは、評価ではなく記録です。

  3. 「問題社員」と呼ぶ前に確認すべき五つのこと

    事実と評価を分けているか、本人に伝えているか、組織の側に原因はないか、規程のどこに該当するか、記録があるか。この五つを型として組織に組み込むことが、会社と従業員の双方を守ります。

「問題社員」という言葉は、人事や経営の現場で日常的に使われています。しかし、この言葉に法律上の定義はありません。遅刻を繰り返す人、成果が出ない人、周囲と衝突する人、規程に違反する人。性質のまったく違う状況が、一つの言葉にまとめられています。

言葉が曖昧なまま対応を始めると、対応も曖昧になります。「なんとなく問題がある」という認識では、注意も指導も処分も、根拠を持ちません。本記事では、問題社員という言葉を「人」ではなく「行動」と「組織の対応」の側から定義し直し、4つの類型に分解したうえで、それぞれがどの対応に向かうのか、そして「問題社員」と呼ぶ前に何を確認すべきかを整理します。人的リスク研究室の問題社員クラスタの入口として、属人化しない組織運営の共通言語にご活用ください。

問題社員とは何か──法律上の定義はない

一般的な用法

一般に問題社員とは、勤務態度、業務遂行、対人関係、規律のいずれかにおいて、雇用契約上求められる水準を継続的に満たさず、組織の運営に支障を生じさせている従業員を指して使われます。「モンスター社員」「ローパフォーマー」「トラブルメーカー」といった言葉も、重なり合いながら使われています。

重要なのは、これらがすべて俗称であり、労働基準法にも労働契約法にも「問題社員」という概念は存在しないという点です。法律が定めているのは、解雇が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でなければ無効になること(労働契約法第16条)、懲戒が同様の要件を満たさなければ無効になること(同法第15条)であって、「問題社員だから」という理由は、法的にはどこにも根拠を持ちません。

人的リスク研究室の定義

人的リスク研究室では、問題社員を「人」の属性としてではなく、次のように定義します。

問題社員とは、雇用契約や就業規則が求める行動水準からの逸脱が、事実として記録できる形で繰り返され、かつ組織がそれに対して適切な対応を取れていない状態にある従業員のことです。

この定義の要点は二つあります。第一に、対象は「行動」であって「人格」ではないこと。第二に、問題は従業員の行動だけでなく「組織の対応の不備」との組み合わせで生じること。人的リスクは「行動×対応の不備×時間」で拡大します。行動があっても、組織が早く気づき、事実を伝え、記録し、改善の機会を設けていれば、多くの場合は「問題社員」にはなりません。

問題社員の4つの類型

問題社員という言葉を行動の側から分解すると、次の4つの類型に分かれます。類型が違えば、確認すべき事実も、向かうべき対応も違います。一人の従業員に複数の類型が重なることもありますが、その場合も類型ごとに事実を分けて記録することで、対応の順序と根拠が明確になります。

類型1:勤怠・勤務態度の問題

遅刻・早退・無断欠勤の繰り返し、業務時間中の私的行為、指示への不服従など、労働契約の基本的な履行に関わる問題です。事実が最も記録しやすく、就業規則の服務規律との照合も明確です。一方で、背景に健康上の問題や家庭の事情がある場合も多く、事実の記録と本人の説明の聴取を並行して進める必要があります。

類型2:能力・成果の問題

業務の遂行能力が求められる水準に達しない、成果が継続的に出ない、いわゆるローパフォーマーの問題です。この類型は「何をもって水準未達とするか」の基準が曖昧になりがちで、能力不足を理由とする解雇は判例上もっとも厳しく審査されます。改善の機会を設けたか、指導の記録があるか、が問われる領域です。

類型3:協調性・対人関係の問題

周囲との衝突、ハラスメント的な言動、チームの雰囲気を損なう行動など、対人関係に関わる問題です。「態度が悪い」「空気を乱す」といった評価語で語られやすく、事実として何が起きたかを記録するのが最も難しい類型です。周囲の申告を受けたときに、いつ・誰が・何を見聞きしたかを事実として残せるかが分かれ目になります。

類型4:非違行為・規律違反

横領、情報漏えい、ハラスメントの加害、業務命令への重大な違反など、就業規則の懲戒事由に直接該当する行為です。事実認定と規程照合が対応の中心になり、懲戒処分の相当性・手続の適正が問われます。行為の重大性に応じて処分の重さが決まるため、同種事案との均衡を確認するための前例の記録が必要です。

類型ごとに、向かう先が違う

是正・配置転換・退出という三つの出口

問題社員への対応の出口は、是正(改善して現在の職務を続ける)、配置転換(別の職務や環境で継続する)、退出(合意退職・解雇)の三つです。どの出口を目指すかは、類型と事実によって変わります。

類型1と類型2は、原則として是正を目指します。注意指導を重ね、改善の機会を設け、それでも改善しない場合に配置転換や退出を検討する流れです。類型3は、配置転換が選択肢として早い段階から検討されます。類型4は、行為の重大性次第で、懲戒処分から退出まで幅があります。

出口を決めるのは記録

どの出口に向かうにせよ、判断の根拠は「いつ、何があり、会社はどう対応し、本人はどう説明し、その後どうなったか」という経過の記録です。記録がなければ、是正の判断も、配置転換の合理性も、退出の相当性も示せません。出口を先に決めて記録を後から作るのではなく、記録が出口を決めるという順序が、問題社員対応の基本です。この順序が守られている組織では、担当者が変わっても同じ判断ができ、本人にとっても納得できる説明が可能になります。

「問題社員」と呼ぶ前に確認すべき五つのこと

第一に、事実と評価を分けているか

「やる気がない」「協調性がない」は評価であって事実ではありません。「9月12日10時5分に出社、始業時刻から35分遅れ、今月3回目」が事実です。問題社員と呼ぶ前に、評価語を事実に置き換えられるかを確認します。置き換えられない場合、それはまだ「問題」として扱える段階にありません。

第二に、本人に伝えているか

問題とされる行動を、本人に事実として伝えたことがあるかを確認します。伝えていなければ、本人には改善の機会がありません。改善の機会を与えずに「問題社員」と扱うことは、労働者にとって不公正であり、後日の紛争で会社側の不利になります。

第三に、組織の側に原因はないか

指示が曖昧ではなかったか、業務量が過大ではなかったか、上司の指導方法に問題はなかったか、配置が本人の適性と合っていたか。問題行動の少なからぬ部分は、組織の側の不備と組み合わさって生じています。人的リスクが「行動×対応の不備」であるなら、対応の不備を先に点検するのが筋です。

第四に、規程のどこに該当するか

就業規則の服務規律や懲戒事由のどの条項に該当するかを確認します。該当条項が見当たらなければ、それは処分の対象ではなく、規程の穴として記録し、改訂の起点にする事象です。

第五に、記録があるか

以上の四つを確認した結果は、記録として残っているでしょうか。上司の記憶と口頭の相談だけでは、「問題社員」という認識は共有できても、対応の根拠にはなりません。

労働者側から見た「問題社員」という言葉

この言葉は、労働者の側から見れば、一度貼られると剥がしにくいラベルです。事実に基づかない評価で「問題社員」とされた従業員は、改善の機会も与えられないまま、評価や処遇で不利益を受けることになります。

だからこそ、会社が「問題社員」という言葉を使うときには、行動を事実として記録し、本人に伝え、本人の説明を併記し、改善の機会を設けることが、労働者の公正な扱いの保障になります。記録の型が決まっていれば、上司の主観や感情がラベルになることを防げます。定義を「人」から「行動と対応」に移すことは、会社を守るだけでなく、従業員を不当なラベリングから守ることでもあるのです。

よくある質問

Q. 問題社員は解雇できますか

「問題社員だから」という理由では解雇できません。解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要であり、注意指導の経過、改善の機会、本人の説明が記録として示せることが前提になります。類型2の能力不足を理由とする解雇は、特に厳しく審査されます。

Q. 問題社員とローパフォーマーは同じですか

ローパフォーマーは類型2(能力・成果)に対応する言葉で、問題社員の一部です。勤怠や協調性、非違行為はローパフォーマーとは別の類型として扱う方が、対応を誤りません。

Q. 問題社員を生まないためには何が必要ですか

採用時のミスマッチ防止、オンボーディング、配置の適性確認といった上流の仕組みと、問題行動が起きたときに早く気づき、伝え、記録する初動の仕組みの両方です。上流だけでは事象は防げず、初動だけでは根本は変わりません。

MONTAIが支える「行動と対応」の記録

MONTAI(モンタイ)は、問題社員対応から派生した人的リスク管理インフラです。

フォーマットの標準化:管理職が迷わず記録できる項目設計。事実と観察の分離を構造として誘導します。評価語ではなく事実で記録する型が、「問題社員」というラベルを行動の記録に置き換えます。

1分記録:スマートフォン・業務端末から、面談直後にその場で記録が完了します。

閲覧権限の厳格な制御:機微な記録を、上司・人事・経営・法務などの役割単位で制御できます。

AIによる規程ピックアップ補助:記録内容に応じて関連する社内規程を自動で提案します(判断はあくまで担当者が行う補助機能)。4つの類型のどれに当たるか、どの条項に該当するかの確認を支えます。

なお、MONTAIは人事判断・法的判断を代替するものではありません。制度設計や個別事案については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。MONTAIは、その相談と判断の質を支える記録のインフラとして機能します。

まとめ

問題社員という言葉に法律上の定義はありません。人的リスク研究室では、問題社員を「人」の属性ではなく、「行動水準からの逸脱が記録できる形で繰り返され、組織がそれに適切に対応できていない状態」として定義します。行動は勤怠・能力・協調性・非違行為の4類型に分かれ、類型ごとに是正・配置転換・退出のどこに向かうかが変わります。

そして「問題社員」と呼ぶ前に、事実と評価を分けているか、本人に伝えているか、組織の側に原因はないか、規程のどこに該当するか、記録があるかの五つを確認すること。この確認を型として組織に組み込むことが、会社を守り、従業員を不当なラベリングから守る、共通の土台になります。

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参考・引用

  • 労働契約法第15条(懲戒)、第16条(解雇)

  • 労働基準法第89条(就業規則の作成及び届出の義務)

  • 厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)

  • 厚生労働省「令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(令和7年6月公表)

関連リンク(MONTAI)

さらに深く学ぶ:関連コラム

本記事の位置づけ

本記事は、「問題社員」という言葉の定義と類型に関する一般的な解説であり、特定の事案に対する法的・実務的な助言を提供するものではありません。個別の従業員への対応や処分の可否については、社会保険労務士・弁護士等の専門家への相談をお勧めします。

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