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PIPの対象者はどう選ぶか|公平性を担保する選定基準と根拠づくり

更新日

PIPの対象者はどう選ぶか|公平性を担保する選定基準と根拠づくり

PIPの対象者はどう選ぶか|公平性を担保する選定基準と根拠づくり

PIPの対象者はどう選ぶか|公平性を担保する選定基準と根拠づくり

  1. 選定の公平性がPIP全体の正当性を決める

    運用が丁寧でも、選び方が恣意的なら「狙い撃ち」と評価される。

  2. 3原則=客観的な水準未達・同一基準の一貫適用・日常指導の経緯

    根拠は、期待水準の明確化→ギャップの事実化→指導経緯→他要因の除外の4段階で整える。

  3. 退職勧奨の拒否直後、印象のみ、属性との相関は避ける

    選定の起点は常に「記録された事実」。部門・上司ごとの偏りは組織として監視する。

PIP(業務改善計画)を導入するとき、意外に見落とされがちなのが「誰を対象にするか」という選定の問題です。進め方やテンプレートには関心が集まりやすい一方、対象者の選び方が曖昧なままだと、PIPは「特定の人物を狙い撃ちにする制度」と受け取られかねません。対象者選定の公平性は、PIP全体の正当性を左右する土台であり、法的リスクの分かれ目にもなります。本記事では、PIPの対象者をどう選ぶべきか、公平性を担保する基準と事実に基づく根拠づくり、そして避けるべき選び方を、経営層・人事責任者の皆様に向けて解説します。


なぜ「対象者選定」が重要なのか

PIPが違法な退職強要と評価されるかどうかは、目標の水準や面談の言動だけでなく、「そもそもなぜこの人が対象になったのか」という選定の合理性にも関わります。

対象者の選び方が恣意的であれば、たとえ運用が丁寧でも、「退職させたい人物を選んでPIPをかけたのではないか」という疑いを招きます。逆に、明確で一貫した基準に基づいて選ばれていれば、PIPは公平な制度として機能します。対象者選定は、PIPの入口であると同時に、その正当性の起点なのです。


対象者選定の基本原則

①事実に基づく客観的な水準未達

対象者は、印象や評判ではなく、客観的な事実として、期待水準を継続的に下回っていることを根拠に選びます。営業成績、エラー率、期限遵守率、具体的な行動事例など、測定可能・確認可能な事実が必要です。

ここで日常のマネジメント記録が決定的に効いてきます。記録がなければ、「なぜこの人なのか」を事実で説明できず、選定は主観に流れます。選定の根拠は、記録の蓄積からしか生まれません。

②同一基準の一貫した適用

特定の一人だけを見て選ぶのではなく、同じ基準を組織全体に一貫して適用することが公平性を担保します。「同職位の中で、この水準を下回る者を対象とする」という基準が明確であれば、対象者の選定は制度的な判断になり、個人への狙い撃ちという疑いを避けられます。

③日常指導を経ていること

いきなりPIPの対象にするのではなく、日常的な指導で改善を促したが改善が見られなかったという経緯があることが望まれます。日常指導という前段階を経ていることが、PIPが唐突な措置ではなく、段階的な改善支援の一環であることを示します。


事実に基づく根拠づくりの手順

対象者を選定する際は、次の手順で根拠を整えます。

第一に、期待水準を明確にします。対象となりうる職位に、会社が何を期待しているかを言語化します。等級制度や職務記述があればそれを参照し、なければ最低限、期待する成果・行動の水準を文書化します。

第二に、実績と水準のギャップを事実で示します。対象者の成果・行動が、期待水準に対してどう、どの期間、どの程度下回っているかを、記録に基づいて具体的に記述します。「営業成績が悪い」ではなく「直近6か月の受注が同職位平均の3割」という粒度です。

第三に、日常指導の経緯を整理します。これまでどのような指導を行い、本人がどう応答したかを、記録から振り返ります。

第四に、他の要因を除外します。健康問題、配置のミスマッチ、ハラスメントなど、パフォーマンス低下の別の原因がないかを確認します。これらが背景にある場合、PIPではなく別の対応が必要です。

この4段階を経て初めて、「事実に基づき、公平な基準で、他の原因も除外したうえで選定した」と言える状態になります。


避けるべき対象者の選び方

次のような選定は、PIPの正当性を損ない、法的リスクを高めます。

  • 退職させたい人物を先に決める:結論ありきで対象を選び、後から理由を探す選び方。最も危険です

  • 退職勧奨の拒否者を対象にする:退職勧奨を断った直後にPIPを開始する運用は、報復・退職強要と評価されます

  • 印象・評判だけで選ぶ:「態度が悪い」「やる気が感じられない」といった主観のみを根拠にする

  • 特定の属性に偏る:年齢・性別・妊娠出産・育児介護・組合活動などと相関した選定は、別途の差別・不利益取扱いの問題を生みます

  • 健康問題を見落とす:メンタル不調が背景にある従業員を、確認せずにPIP対象とする

これらに共通するのは、事実ではない何かを起点に対象を選んでいることです。選定の起点は、常に記録された事実でなければなりません。


対象者本人への伝え方

対象者を選定したら、その事実と根拠を本人に丁寧に伝えます。ここでも、「あなたを問題視している」ではなく、「この業務のこの水準について、改善を一緒に目指したい」という支援の枠組みで伝えることが重要です。選定の根拠となった事実を具体的に示し、本人の認識も聞き取り、記録します。伝え方が高圧的であれば、公平な選定であっても不信を生みます。


ガバナンスの視点:選定の偏りを監視する

対象者選定は、現場任せにせず、組織として監視すべきテーマでもあります。PIPの実施状況を人事・経営が把握し、特定の部門・上司に対象者が偏っていないか、特定の属性と相関していないかを定期的に確認する仕組みがあると、制度の悪用や無自覚な偏りを早期に発見できます。対象者選定の公平性は、個々の判断の集積であると同時に、組織のガバナンスの問題でもあります。


ミニケースで見る選定の分かれ目

ケースA(公平と評価されやすい選定):同職位5名の受注実績を一定基準で比較し、直近6か月で平均の5割を下回る1名を、日常指導でも改善が見られなかった経緯とあわせて対象とした。健康問題・配置ミスマッチがないことも確認し、根拠を文書化した。

ケースB(狙い撃ちと疑われる選定):退職してほしいと考えていた1名について、他のメンバーとの比較や日常指導の経緯を示さないまま、上司の「態度が悪い」という印象を根拠にPIPを開始した。しかも、その従業員は直前に退職勧奨を断っていた。

両者の違いは、対象者の実際のパフォーマンスではなく、選定の起点が事実か、結論(退職)かという点にあります。ケースAは基準と記録で説明でき、ケースBは説明の材料を持っていません。


よくある質問

Q1. 複数人を同時に対象にしてもよいですか

同一基準に基づいて複数人が該当するなら、問題ありません。むしろ、基準に沿って一貫して選定していることの表れになります。ただし、一人ひとりの課題事実・目標・支援は個別に設計し、画一的な運用にならないよう注意します。

Q2. 上司からの推薦だけで対象を決めてよいですか

上司の問題意識は出発点として重要ですが、それだけを根拠にするのは不十分です。人事が客観的な事実(記録・実績データ)に照らして妥当性を確認する二段構えが、公平性と説明可能性を高めます。

Q3. 対象にしなかった人との公平性はどう説明しますか

「同じ基準を適用した結果」であることを、記録と実績データで示せる状態にしておくことが答えです。基準が明確で一貫していれば、なぜある人が対象で、ある人が対象でないかを客観的に説明できます。基準そのものの妥当性は、専門家のレビューを受けておくと安心です。


選定の根拠を支えるMONTAI

MONTAI(モンタイ)は、問題社員対応から派生した人的リスク管理インフラであり、対象者選定の根拠となる日常の記録を支えます。

フォーマットの標準化:事実と観察を分離した記録を構造として誘導し、印象論ではない選定根拠の蓄積を助けます。

1分記録:日常の指導や観察を、その場で短時間に記録できます。

閲覧権限の厳格な制御:選定に関わる機微な記録を、上司・人事・経営・法務の役割単位で制御します。

AIによる規程ピックアップ補助:記録内容に応じて関連する社内規程を自動で提案します(判断はあくまで担当者が行う補助機能)。

MONTAIは人事判断・法的判断を代替するものではありません。対象者選定の妥当性や差別的取扱いの懸念については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。


まとめ

PIPの対象者選定は、進め方やテンプレート以前に、PIPの正当性を支える土台です。事実に基づく客観的な水準未達、同一基準の一貫した適用、日常指導の経緯という3原則に沿い、期待水準の明確化・ギャップの事実化・指導経緯の整理・他要因の除外という手順で根拠を整えます。結論ありきの狙い撃ちや印象での選定を避け、選定の起点を常に「記録された事実」に置くこと。これが対象者と会社の双方を守ります。

MONTAIの資料(PDF・入力不要)では、対象者選定の根拠となる記録運用の実装イメージをご紹介しています。

資料をダウンロードする / デモを申し込む


参考・引用

  • 労働契約法第16条(解雇権濫用法理)

  • 東京高判平成25年4月24日(PIP実施後の能力不足解雇を無効とした裁判例)

  • 厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)


関連リンク(MONTAI)


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本記事の位置づけ

本記事はPIP対象者の選定に関する一般的な解説であり、特定の事案における選定の妥当性を判断するものではありません。個別の事案対応については、社会保険労務士・弁護士等の専門家への相談をお勧めします。

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